この曲は戦中戦後の方たちにとっては憧れの名曲で難曲中の難曲だという話である。しかし今や音大生のほとんど、いや音大に行かない人ですら弾けるような時代になってきた。
ある程度の難易度はあるのだが、最近のイザイやプロコ、ハチャトリアンなどからすればやさしいほうなのである。
この曲はその昔、当時ウィーンに留学中だった日本でも指折りの著名なソリストでありコンサートマスターの方のオーケストラ伴奏もさせていただいた。
年齢と共に難しいところが変わってきた。
たんに私が技術的にすこし進化しただけなのだが、手が柔らかく自在に動きやすかった少年時代は前半が弾きやすかった。中年になると後半が弾きやすくなったりする。そして今や前半には自信喪失状態である。なんてことないと思っていたアップスタッカートの速度調整がきかなくなって一様になってしまう。だんだん早くしたりだんだん遅くしたりというリズムのゆらしの幅が小さくなってきた。関節の可動域がせまくなってきたじいちゃんの心境である。結局単調に飛ばす後半のほうが簡単なのである。
シェラディークをやれば早いパッセージが弾けるようになるかといえば、そんなことはない。ただ反射神経、運動神経がきちんと働く方がよほど大事だ。
この曲も合奏で弾いたが、合奏で気楽に弾くと今度はソロで弾くのにかなり緊張してしまってよくない。いろんなところで老化を感じてきている今日この頃である。