アイドルやスターの歌謡曲や演歌まで、一般的によく聴かれている音楽は、街中で、大型ショッピングモールで、商店街で、コンビニで、テレビで、どこからでもよく流れてきていて、非常になじみがあります。
あ、これ前も流れていたなあとか思いながら買い物をしたりします。
思春期には特に異性のアイドルなど気になるのも仕方がありません。
しかし、それらの対極には、わざわざ出かけて行って費用を支払わなければ聴くことが難しい音楽もあります。NHKのクラシック番組はありますが、それ以外はあまり聴くことがないものです。特別な音楽で、ごく一部のエリートとキリスト教徒くらいしか知らない。高度に専門的な曲目を知っているのが不思議なくらいですが、知っている人たちはよく知っています。
この両極端な一般大衆音楽とエリート音楽とでも呼ぶべき特殊な音楽は、私たちがそのギャップに戸惑うほどのミゾを感じさせられます。
私はどちらとも聴く派だったのですが、アイドルのポップスの音程のひどいずれように、いつしかクラシック寄りを好むようになりました。キリスト教徒でもないのに、キリスト教音楽を含めて好むのは、その品質の高さからです。
でも知らない曲がとにかく多すぎて、時に戸惑うこともあります。
オーケストラのコンサートでよく取り上げられる曲目をなんとかわかる程度で、少しマニアックな曲というか専門的な曲、作曲家のものになるとまるでわかりません。
そしてそれで別によいと思っています。
数多く演奏される機会のある曲のほうがより優れているに決まっていると考えるのが普通だからです。めったに取り上げられないけれども優れた曲というのは眉唾です。どれだけ優れていたとしてもあまり関心が湧きません。
余興の一曲くらいならそういう曲を織り込んでも目新しさで楽しむことが出来ます。
品質の高い音楽を楽しく鑑賞することは、私にとってこの上ない喜びになっていますが、ある程度作曲家の違いや歴史上の位置くらいは知っていたほうが、楽しく聴けます。その程度なら高校音楽の授業の知識程度でも十分です。
無料でよく聞こえてくる音楽、コマーシャル音楽というものが品質の低いものばかりなので、40年も聴いているとさすがにもういらないものに感じられてきます。いわゆる雑音とか騒音のたぐいに感じられます。時には多大なストレスになります。
そこで余剰の音楽家が大量に存在していることを、どうにか活用できないものかと思います。要するに地方に予算がないから、地方に大企業本社が少ないから、音楽家を雇ってみなさんに親しみやすいクラシック音楽を安価或いは無償で提供できないわけで、実は音楽家はたくさんいます。表現は悪いですが、年齢は中高年でも立派に演奏できる音大卒がいくらでも余っています。
これを品質の低い音楽に予算をかけすぎて、クラシック演奏能力は閑古鳥状態。人気を集めたり、集客のためにクラシック音楽を専門で勉強した人達がジブリとかアニソンとかやる状況にあります。
この逆転現象は、あまり歓迎すべきではありません。
童謡はいつでもすぐにできる人たちなので、本心はクラシック一本で音楽家には押し通して欲しい。
どうしてもポップスやアニソンが好きで好きで仕方がないからという人は支持されているし、それはそれで需要があるので仕方ないと思いますが、音楽といえば基本的にクラシックや童謡を指すものであるし、またそれを基本にしなければ、不真面目でいい加減な不純異性交遊を常識とするような国民が増える一方で、もはや手に負えない状況があります。
私はなにもキリシタンではなく、キリストという実在した人物についてそれほど詳しくないので、回し者としては不適当な者だと思っています。
宗教的なことよりも、レベルの高い、質の高い音楽を身近にいつも楽しめるような環境づくりが進んで欲しいなあと願う者です。それもあまりにもマニアックな専門家しか知らないような音楽ばかりではない、ある程度馴染みやすくてしかも精神的な高さを感じさせるような音楽企画がひろく提供されるようになるといいなと思います。
この国には老若男女が生活していて、思春期から適齢期に照準を絞って甘く媚びへつらう享楽的なポップスやアニソンには非常に疑念を持っています。楽しければなんでもいいじゃんとか言ってる人たちを見ると、なんだか悲しくなります。
東京ではまだ音楽環境は良い方ですが、地方のクラシック音楽の過疎ぶりは酷い状況だと思います。地方に予算が必要だし、地場企業で力を合わせて質の高い音楽提供に工夫してみるのも大事かなと思います。わざわざ一人交通費込みで10000円も払っていい音楽を聴こうなんて奇特な人たちしかいないわけですから。しかも在京オーケストラには料金割引が充実していますが、地方オーケストラには割引自体がなかったりします。
いやバイオリンを少し弾く音楽好きとして地方であまりに浮いてる感が半端なかったものですから。
そもそも音楽エリートたちに音楽を普及させるつもりがあるのかといぶかしがる人がいてもおかしくありません。毎年ほんの数名のエリートだけが国や財団から奨学金を支給されたり、ほそぼそと仕事があったりして、ほとんどの音楽家は食うや食わずやの閑職では、その投資や努力にあまりにも見合わないと思います。なんてもったいない状況なんでしょうか。
私の母校では、数十年前から毎月プロの音楽家を呼んで大学の大きなホールでコンサートを開催するイベントをやっていますが、これには地域の希望者をほぼ全員無料招待しています。地域の音楽家や関東の有名音楽家など幅広く活用していて、学費はきちんと支払っていましたが、とてもありがたかったことを憶えています。一度は内々にレッスンも受講できました。
極東の島国と卑屈にならずに、アジア太平洋の津々浦々でも、みなさんが平たくお高い音楽を気軽に楽しめるといいですね。