FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

バイオリンの弓選びの要素と決め手

1レパートリーや時代

2基本性能

3楽器との相性

4目利きの意見

5一番確実で間違いのない選択肢とは

フルサイズになってから、楽器付属弓、ヴァンカ、アメリカ製、ダベール、ユーリ、マーキスを使ってきて、後継ヴァンカ、マーロンディ、ギヨーム、ヴォアラン、バザン、ウーシャ他のそこそこの弓を新旧問わず試奏させてもらい、良い弓のいくらかが掴めた。

製作者目線の知識は参考にしながら、弾くうえでなにが大切なのか考えてみる。

もちろんクラシックバイオリンのことで限定的ではあるけれど、これからもし選べるならどう選ぶかという1つの例として参考になればと思う。

曲の難易度と完成度の掛け合わせでは、中級者としての参考レベル。

1レパートリーや時代

弓は時代、地域、作者、材質で大まかに変わる。

現代弓の典型だけではない。

まずは、どのジャンルのクラシックバイオリン曲、どの時代幅に焦点を合わせるか?

初心者ならバロックや古典の練習発表向き、中級者ならロマン派以降ご披露用なので、相応の形のタイプを選ぶ。

地域というより師匠の工房と独立後の地域を把握して選ぶ。削りの特徴が基本的発音や音の太さなどを既に決めている。

材質は良いに越したことはないが、硬くて密の詰まった材は誰が作っても音質が良い。

ヴァンカの父親の作品は例えば先が軽くてバロック弓のイメージでずいぶん弓の中央よりを持って弾いた。フランスとかドイツとかではない個性溢れるタイプで、応用が効くのはバロック弓。

ダベールは材質が2級のものだったが、充分に良い。現代弓タイプで剛弓タイプ。イメージ色はまばゆい白。

ダベールと対照的に比較するように勧められた現代弓はとにかく柔らかくイメージ色は青白い。トルテ系。(製作者は忘れたがフランス新作)

ペドレッティは旧タイプがラミー形系統に感じたのでわたしには相性がまあまあでイメージ色はオレンジ色。2008年頃からの新型ペドレッティはペカット系統に感じるがイメージはやはりオレンジ色。

ダベールの実際に所有していたものは、年代がやや古くて材が明らかに変色し音質は素晴らしくハキハキしていてまろやかだった。

次々と印象は浮かぶがきりがない。

2基本性能

製作者によって操作性が違うのは使う材質の範囲があって、その削りが同じだから。

弾き手のリズム感や音程の精度をそのまま反映させてくれなければ困る。

使い慣れない形の弓では、その判定はほぼ不可能。重心バランスがどこでも弾けるのはよほど器用で勘がよい。

弾き込んでいてたくさん試したわたしは判定可能で、精度の高低がよくわかる。

だから1分もしないうちにダメな弓はハネてしまう。

3相性

次に音質は楽器に合わせることが一番で、楽器の良さや欠点をわかれば、どの作者の弓と相性がよいかわかる。楽器屋さんに聞くべきだ。

クライスラーが使用していた弓製作者の息子の製作弓を所有していた時に、クライスラーの発音の鋭さはこの弓から来ていたのかと納得したことがある。反応が今ひとつの楽器も弓で反応が変化する。

スターンの使用していた弓製作者の弓をガルネリに合わせるとスターンの音色に限りなく近い音がする。

つまり出したい理想の音色音質を先に決めてそれに近い合成音を探すという選び方がある。

もちろんそうではなくて、どこまでもオリジナリティを追求する、理想のレパートリーのオリジナリティから選ぶほうが面白い人もいる。

そのためには、音色だけでなく繊細さと音量を最高にする組み合わせが要る。

4目利きの意見

音色は楽器と合わせてみなければハッキリとはわかりづらいが、繊細さと音量は目利きの楽器屋さんなら既にわかっている。

楽器屋さんへ行ってみて、漠然とどんな弓を予算いくらまででと聞いても皆目見当がつかない。

どの時代のどのあたりのレパートリーを弾きたいのだが、材質と削りの精度がどのあたりの製作者のもので、この楽器によく合う弓を選びたいというところからはじめると比較的選びやすい。

楽器屋さんは選択肢を勧めやすい。

理想の音は、楽器と弓だけでなく、弦や松脂と弓毛の質と量に駒魂柱からフィッティングまでの総合的な合成で実現するものなので、現代の好きな演奏家、過去の名手がどんな組み合わせなのか知ることも大切だ。

しっかり下勉強、予習をして、よく運弓技術を磨いてから、楽器屋さんに説明できる段階で探すのが正解かも知れない。

5一番確実で間違いのない選択肢とは

そういう意味で、コーダ社のプロディジーかGXかマーキスの3種類のカーボン弓を中級までの間使うのが、一番上達がはやくてコスパ抜群だというお勧めもある。

シビアだが、音大を優秀な成績で卒業するレベルになってから、理想の名弓を選ぶのが本当なのだという意見だ。

過去にわたしの理想の相性を感じた弓が、実になんとわずか数万円のアメリカ製(スターン使用弓の製作工房製)だったという事実が、その本質的難しさをあらわしていると思う。

今は楽器の理想を射止めたので、本当に名弓の中からしか選べないという悩みになったが、自分の耳を過信せずに、よくよく耳を澄まして音色音質を聴き分け、弾き分けるために注力すべきだというのが、経験者としてのアドバイスだ。

そのうえで楽器職人さんや楽器屋さんの販売専門員の助言はようやく有用性を帯びるから、皆さんが浪費癖や優越感の魔性に自滅しないように切に願う。

あぶく銭の悪趣味では、まっとうな人間、真摯な音楽ファンに申し訳ないと思う。

これからさらに耳を肥やし腕を磨いていこうと決意している。

どんな人も一生勉強と言い聞かせて。

補足

教師にもよるが、教師がきちんと生徒の楽器や課題を熟知していれば、少なくとも楽器屋によい選択肢を提示させることは可能なので、割高になるケースが多いが、もし信頼できるならば教師に相談するのも1つのやり方だ。