音程を言語化するのは、そこそこ難しいが、ほどほどに言語化できるので、いちおう書いてみる。
ピアノの調律師が調律しているのを聞いたことがあれば、器具で音程の最終微調整をしているのを思い出す。
楽典でいくつもの音階を読んでみても、バイオリン音程はそのいずれにも属していない。
一応は音階の組み合わせで説明される。
どちらも純正律で弾こうとしたが、難しい表現箇所があったり、バイオリンらしからぬ感覚とでもいうべき手の形を覚えることになって、結局はそれでは難しい。
しかし、いずれにしても伝統的なクラシックバイオリンの基礎的な音階は少し異なる。
独特のものだと改めて気が付いたのは、最近のレッスンにおいてである。
最初の幼児期から中学生の頃というのはまったく無自覚無意識に独特のバイオリン音程にぴったり合わせていた。
他方、私の母はピアノと歌唱をかじっていたためか、バイオリンで平均律を出せと喚いていた音楽的狂人であった。
いまだにその困惑は私の心を不安定化させている心の傷である。
スズキメソッド方式の教室で行われる合奏においては、自然にバイオリン音程で合わせるから上達する。加えてほどほどの市民オーケストラでは弦楽合奏だけでなくて管楽器や打楽器とも合わせるから、素晴らしい音響の妙を実体験する。
1989年1990年のそのころは、チューナーはまだ一般的ではなくて、すべて耳から覚えていたから、楽典的には無自覚そのものだった。
今は誰でもやろうと思えばチューナーで楽典と照らし合わせながら音程をとることができる。
ただバイオリン独特、特有の音程はシャープとフラットでも異なるし、時にナチュラルですら異なるから、チューナーはAを取る以外はほぼ使えない。段階によっては参考にすることすら危険だ。
初心者なら少なくともシ・ファ♯・ド♯・ソ♯が少し高い。第1ポジションで2の指を3に寄せた音程だ。
その応用形が縦横に使えるようになると素晴らしいバイオリン音程が弾けるようになる。
だから本来は合奏で自然に音程は覚えるものだ。
集中して呼吸と併せて自然で微妙な感覚を体験して覚えるものだ。
そこまで含めて思い出しているところ。
様々な指揮者指導者によって傾向が多少違うが、人が集まって空気を合わせる作業を重ねる中で音楽を体得する。
その一部が微妙な弦楽器とバイオリン特有の音程だ。
もちろんスズキメソッド式にソリストのほぼ完璧な音程から学ぶ学び方も重要だ。
それら総合的な音楽の学びを意識して教師や大人は環境調整する必要がある。
妙音はその中でまっすぐに完成の領域へと向かう。
微調整していると、改めてバイオリンはこれほどまでに美しい楽器だったのか、こんなにこの曲は素晴らしかったのかと再発見できて自分も周囲も幸福である。
だから原則誰でもバイオリンはプロフェッショナルレベルで弾けるようになるはずのものだ。
完成したら仕事としても自信を持って使える技能になるが、仕事の需要がそれほど安定してどこにでも存在していないところが世界中音大卒ですら悩ましい。
自発的な企画力がある演奏家との縁や安定的な所属があれば素晴らしいだろうが。。。