今の都市部では、マムシなんて見たことも聞いたこともない人たちばかり。
道を歩いていても警察官がそこかしこで、よほど運が悪いか、完全に狙われているか、被害なんてほぼない。
病気になれば医療体制とかなりよい薬と。
毒蛇は怖いものだが、なにが恐ろしいかといえば、草むらで不意に死にそうになるからだ。
それも血清があれば助かるが、むかしはそんなものない。
地震雷火事親父というのはDVが前提で別の問題があるが、不意に死にそうになるものは常に自分の傍に潜んでいることにかわりない。
仏教の一念三千の教えでも、われわれの身を置くこの世界が多層空間で不意に鬼の世界に引きずり込まれたり、物理学でも十次元の宇宙世界を数式化したりしている。
きちんと悟れば地割れにはまらず鬼羅刹の誘惑を無視し雷の直撃をかわして悠々自適だが、そんな人間は滅多にいない。
名器の美音、歌手の美声、美味しいものにあっさり白旗で雷にうたれる。
毒蛇、鬼、妖怪などは、今も昔もほんとうは変わらずわれわれを取り巻いているそこらへんの人間なのだ。
いつなにがあるかわからないという不確定要素たちを薬効として使いこなせるようになると成長で楽しいものだ。