FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

世間知らずにはヘヴィな1冊、自己中には情熱的1冊、優秀で孤独な人が前向きになる1冊

気になる1冊目
調査報道記者
国策の闇を暴く仕事

日野 行介 著 明石書店

山本太郎氏(れいわ新選組代表)推薦!
「こんな記者がスタンダードだったなら、私は政治家にはならなかった」

原発事故後、数多くのスクープを通じて隠蔽国家・日本の正体を暴き続けた職業ジャーナリストの、狂気と執念。陰湿な権力に対峙し民主主義を守るために報道してきた事例と方法論を、傍観者でありたくない全ての人におくる。10年をかけた〈原発戦記〉の集大成。

【「おわりに――調査報道に関する一考察」抜粋】

ハンナ・アーレントは、親衛隊中佐としてユダヤ人を収容所する輸送する任務を担ったアドルフ・アイヒマンの刑事裁判を基にした著書『エルサレムアイヒマン』(みすず書房)で、思想信条を持たずに、思考停止することで大量虐殺を担うことが可能になったと指摘している。この視点は「凡庸な悪」という言葉で広く知られることとなった。アーレントの著書はエルサレムにおける刑事裁判の記録が基になっている。国策が破綻した結果開かれた裁判によって「凡庸な悪」を表現できたと言えよう。

原発も官僚機構が支える国策であり、担当者が思考停止しなければ進められない点が共通している。そして、国策は意思決定過程を隠し、外部からの検証を激しく拒んでいる。日本型の行政不開示システムにあっては、本音と建前、温情的なスローガンと冷酷なテーゼという二枚舌がさらに検証を難しくする。このような「凡庸な悪」を追及する手段は調査報道しかない。

私の調査報道は、政治家や為政者のスキャンダルや人間性ではなく、官僚機構が構造的に内包する非人間性に焦点を当ててきた。原発事故処理、原発再稼働という国策はこうした非人間性が最も色濃い分野と言えよう。そこに従事する担当者の多くは忠実な「小役人」であり、たとえ形式的でも整合性があるかのように装うこと、いわゆる辻褄合わせに腐心しているだけだ。担当者個人の思考や人間性が反映する余地は乏しい。このような国策に適応するには思考停止せざるを得ない。

彼らと同じ立場に置かれたとき、「共犯者」とならずに良心を保てる人がどれだけいようか。その難しさを分かっているからこそ批判も盛り上がりにくい。それでも職業記者としての自らの使命感に問いかけたとき、これを看過できなかった。これこそが民主主義を破壊する「真正な悪」だと思えたからだ。

そこで提案したいのが、国策の隠されたテーゼを暴くという目的の達成を調査報道の「成果」とする意義づけだ。これまで述べてきた通り、テーゼを明らかにすることは役所の暴走を監視し、民主主義の基盤を守る効果がある。一人一人の記者・ジャーナリストが自らの問題意識に基づいて調査報道に取り組むモチベーションを構築しなければならない。

『フクシマ6年後 消されゆく被害』(人文書院)の共著者であるロシア研究者の尾松亮氏からは「日野さんを見て、調査報道に必要なものは狂気と執念だと感じた」という評価をいただいた。「執念」は一つのテーマに取り組み続ける粘り強さということで分かりやすい。「狂気」は誤解を招きやすい言葉であるが、固定観念にとらわれずに「真正な悪」を見抜く強い使命感だと私は解釈している。

プロの記者・ジャーナリストとは調査報道を担う人であるべきなのだ。そこに必要なものは「狂気と執念」だけである。
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目次
【目次】
はじめに
第1章 「秘密会」で被曝の証拠隠滅―福島の県民健康管理調査
第2章 年間二〇ミリシーベルトに引き上げられた避難基準
第3章 避難者の住まいを奪う「棄民政策
第4章 放射能汚染を不可視化せよ―除染の真実
第5章 新生を装った原発規制
第6章 「絵に描いた餅」の避難計画
第7章 結論しか発表しない日本型の「行政不開示システム」
第8章 記録と聞き取りで意思決定過程を解明
第9章 「国策のテーゼ」を伝える
おわりに―調査報道に関する一考察


気になる2冊目

泉 房穂
子どものまちのつくり方 明石市の挑戦

内容紹介
公共事業やバラマキはいらない。子どもを核としみんなにやさしいまちづくりが人口・財政・経済の好循環を創る。発想の転換で旧弊を廃した自治体経営、持続可能でユニバーサルな施策で時代を先導する明石市長が描く誰ひとり置き去りにしない共生社会の未来図。

目次

序 章 いま、明石が熱い
第1章 子どもを核としたまちづくり
第2章 すべての子どもたちを、まちのみんなで
第3章 やさしい社会を明石から
第4章 本のまち、明石
第5章 発想の転換による自治体経営
対 談 オール・フォー・オールのまちはつくれる〔井手英策×泉房穂

内容(「BOOK」データベースより)
日本全国どのまちでもできる、みんなが幸せになるまちのモデル。6年連続人口増!財政、経済の好循環が加速、明石市

著者について
泉 房穂(いずみ・ふさほ)
1963年明石市二見町生まれ。
82年明石西高校を卒業し、東京大学に入学。東大駒場寮の委員長として自治会活動に奔走。
87年東京大学教育学部卒業後、NHKにディレクターとして入局。
NHK退社後、石井紘基氏(後に衆議院議員)の秘書を経て、司法試験に合格。
97年から庶民派の弁護士として明石市内を中心に活動。
2003年、衆議院議員となり、犯罪被害者基本法などの制定に携わる。
11年明石市長選挙に無所属で出馬し市長に就任。
全国市長会社会文教委員長。社会福祉士でもある。
柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
泉/房穂
1963年明石市二見町生まれ。82年明石西高校を卒業し、東京大学に入学。東大駒場寮の委員長として自治会活動に奔走。87年東京大学教育学部卒業後、NHKにディレクターとして入局。NHK退社後、石井紘基氏(後に衆議院議員)の秘書を経て、司法試験に合格。97年から庶民派の弁護士として、明石市内を中心に活動。2003年、衆議院議員となり、犯罪被害者基本法などの制定に携わる。11年明石市長選挙に無所属で出馬し市長に就任。全国市長会社会文教委員長。社会福祉士でもある。柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

気になる3冊目

子どもが増えた! 明石市人口増・税収増の自治体経営 湯浅誠/〔ほか〕編著 泉房穂/〔ほか〕編著 光文社
兵庫県明石市は、近年、子育て支援による子ども増・人口増・税収増で注目されている。
市が掲げる「子どもを核としたまちづくり」「やさしいまちを明石から」が、聞こえのいいスローガンで終わらないのはなぜか?その要因は?市民・市議会の理解は得られているのか?理屈ではなく実践を積み重ねてきた現市長と元内閣府参与が、自治体関係者、元官僚、研究者などの論客を迎えて多面的に分析する。
住模が市長に本音をぶつけるスペシャル座談会も収録。

内容紹介
〝暴言市長〟のもう一つの〝顔〟

実務家・論客たちが施策を全解剖

兵庫県明石市は、近年、子育て支援による子ども増・人口増・税収増で注目されている。市が掲げる「子どもを核としたまちづくり」「やさしいまちを明石から」が、聞こえのいいスローガンで終わらないのはなぜか? その要因は? 市民・市議会の理解は得られているのか? 理屈ではなく実践を積み重ねてきた現市長と元内閣府参与が、自治体関係者、元官僚、研究者などの論客を迎えて多面的に分析する。住民が市長に本音をぶつけるスペシャル座談会も収録。

はじめに~〝暴言市長〟のもう一つの〝顔〟 湯浅誠

第1章 人口動態で見る地域の「健康」 藻谷浩介(地域エコノミスト)

第2章 マイノリティが社会発展の鍵を握る 村木厚子(元厚生労働省事務次官)

第3章 1%の積み上げで地域は蘇る 藤山浩(持続可能な地域社会総合研究所)

第4章 市民とともに責任を担い合う自治 清原慶子(三鷹市長)

第5章 「転換期」のリーダーに求められるもの 北川正恭(元三重県知事)

第6章 「魚目線」で地域の自然を見る さかなクン(東京海洋大学名誉博士)

おわりに~泉房穂