FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

クラシックバイオリン本来の音 とある音楽観と

f:id:FujiYama:20210830000812j:plainバイオリンなんてなにがいいんだろうというイメージがあってもそれはそれで正しい。
ふつうに聴覚を直撃して刺激する物理的に計測される音としての優秀さを追い求めるバイオリンとバイオリン弾きが無数に存在している。何気なくバイオリンの音のイメージを持って聴くと実はそこには不快感や違和感、威圧感や緊張感がある。音が主張し個人が自己顕示して鋭利に音量でアピールする剛力で圧倒するタイプである。
私はこのありふれたバイオリンとバイオリン弾きが苦手である。子供のうちは可愛げがあって許せるが、大人だとうるさいなあとか勝手にやっていればよいと思うことすらある。近現代にバイオリンが改造されて刺激の強い爆音を是とするようになったのが大きい。大砲、戦車、爆弾、ミサイル、核兵器、現代バイオリンという並びで、多くの人がストラドをF1マシンになぞらえてみんなで過剰な緊張と緊迫のひたすら強い音を追い求める。ガルネリの最高のものの愛称もキャノンで大砲だ。
改造前のバイオリンの歴史をたどって平衡感覚をとりもどして、人類史における弦楽器とバイオリンという尺度で改めて見直してみることが必要だと思う。
人間が生きる喜びを中心に他者の死と向き合い団欒や憩いをほっこりしながら楽しんできたところの本来的音楽こそに価値がある。
本来弦楽器の音色は色彩豊かで四季の微妙な変化を余すところなく醸し出し、前向きな人間同士で融和し、自然と調和しながら、共鳴に満たされ柔和な心と表情で状況に柔軟に対応しながら表現されるものである。
音楽はどちらかと言えば音量で表現するのではなく音質で伝えるものだろう。もちろんときには明確で強い音も必要だ。
今は極端に音量や力による大量破壊兵器志向のバイオリンや演奏ばかりが蔓延している。
電子音楽の快楽的な音響に麻薬的な効果があり、他者の死と苦悩に対して不感症になりがちでもある。大量破壊兵器と科学万能信仰は、地球上から本来の音楽を駆逐している。
時々現代バイオリンが嫌いとか違和感を覚えるとかいう人がいたら、その人はきっと健康な人間だ。
意識しなければ多くの人が華やかな音楽で不幸になる。
表現が自然で深みやふくよかさのある演奏とそうでない硬直した演奏が並存、混在している。
たくさんのバイオリンとバイオリン弾きの音楽に耳を傾けてきて、そう思った。