FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

バイオリンの上達過程をたどる   先生の選び方の参考に 練習の参考に

現在4割から6割くらいまで右手の技術が回復してきて、とても楽しく充実した感じで音を出せるので、ここで上達過程を振り返りたい。ちなみに31年前に日本を代表するような指導者からメンデルスゾーンの協奏曲一楽章について人前で演奏できるレベルと認定されたことがある。

右手と左手と心理的な3つに分けて考えていく。

右手はほんとうに難しい。通説のとおり、かんたんには上達しない。

私は最初スズキメソードで取り掛かったので、有名なタカタカタッタから開始したが、これは是非ともおすすめの取り掛かりである。しっかりしたリズムを正確に打てるようになるまで、半年がかりの人がいるくらい難しいが、まず挑戦である。その他のリズムもやる。やさしい練習曲をスズキなどでやる場合、正確な一音一音とリズムを明確に出せるまで、ゆっくり丁寧に練習する。デタシェやマルテラなど限られた弓使いばかりであるが、じっくりやる。スズキは知能程度が普通なら2年から3年程度で終了する。篠崎バイオリン教本も同じくらいの期間で終了する。途中からやや難しい弓使いが出てくるが、とにかくゆっくり丁寧にやる。

弓使いの練習は名教師アウアーの弟子カールフレッシュが言う通り、各パターンで音階練習をすると上達が早い。音階を苦手な弓使いで練習するのだ。教則本で練習しようとすると、ついメロディーに気を取られてあまり右手の練習にならない。教則本で右手を練習するのは実は高度な技術が必要になる。だいたい左手に気を取られるからまともな練習にならず、時間の無駄ばかり。。と相成る。気を付けたい。バイオリン演奏の技法という書籍は聖書みたいなものなので本気でやりたい人は一読しておく必要がある。

ある程度左手が慣れてきた教則本の曲で難しい弓使いの練習をするのは効率的で抜け目がない。弓元、弓先、中弓、跳弓、スラー、それぞれの速度や組み合わせなどがとても弓が楽器に吸い付くようになる練習方法で、どんなバイオリン弾きも全員がやるべき練習。

ドロシーディレイの弟子がすすめる圧力の練習も面白く効果がある。全弓の中に1回から12回まで弓を止めずに圧力をかける。プレッシャーエキセサイズ。コツがいるからやってみるとよい。これも弓が楽器にフィットする方向性のいい練習。あとトーンコントロールエキセサイズとスピードコントロールエキセサイズがあるが、おいおい。米谷彩子で検索すると動画が出てくる。

右手は特に、自分の音が聞こえているかどうか、という点と右手の意識がきちんと紐づくようになる段階まで、練習の仕方も含めて勉強しなければならないことが難しい。

楽譜をただなぞる程度では、難しい曲でもなんでも弾けたことにしてしまおうという粗目なまったく無意味な練習と成果となり、時間と労力と金銭の無駄になる。

丁寧に一音一音をよく耳で聴きながら、時に録音したり、家族などに聴いてもらいながら、じっくり積み上げていく練習が上達の早道だろう。もちろん先生の助言や指摘は絶対に聞き逃さずにチェックしてクリアできるように最大限努力する。

右手は石を積み上げて家をつくるような作業で、各部の安定感を確かめながら一つずつ習得しなければならない。

様々な練習方法を地道に繰り返して少しずつ上達していくより他によい方法はない。

次に左手について、あまり心配しなくてもよいと思う。

アーティキュレーションに至るまで、要するにシュラデークかセブシックをやればよい。最初は一拍ごとに弓を返しながら、極限までゆっくりのテンポで形に注意しながらん練習する。形が解ってきたら、少しずつ早く練習し、私の場合1年してから指示されているモデラートで練習するようになった。その頃になると、曲の中でも左手の形がほぼ安定してきて自ら驚いた。以前よりはるかに音程が安定した。

それ以前に、スズキを丁寧にやっていたから、実は移弦を含めた左手の形がすでに習得に近いところまで行っており、最終調整にシュラデークを使うと完璧ではないかと思う。左手の指で音を表現することができるようになるまで、シュラデークはしつこいほどゆっくり根気よく練習すべきである。スズキを丁寧にやることと併せてやるべきだ。

シュラデークの効用は、レッスン前や本番前にやってウォームアップに使えることで、これを知らなければ45分以上の準備が必要になり、効率が悪いので、習得は早い段階で済ませておくのがよい。習い始めて3年もたって教えてもらっていない場合は、ちょっと指導者としてどうなのかなと思う。

音階の重音と曲で出てくる重音のギャップにしばらくは悩む。音階は音階であってほとんど役に立たないような気がしてくるが、着実に習得していくと曲で活用できるから、心配しないで習得のために努力をしてよい。左手に不安がなくなるから、音階はぜひきれいに弾けるようにするとよい。重音の音程を美しく覚えることは日本人の課題。きれいな発音も同時に覚えるように練習する。10度はできるだけ早くとりかかって指慣らしを開始するべき。成人後から覚えると指がバラバラになった感じで実戦で使えないものになってしまうため。いきなりカールフレッシュをやるのは難しいと素人感覚では思うが、小学校低学年でも全然問題ない。(追記 10度は手の大きさによって痛みが出るほどは無理してはいけない)

練習の仕方をよく習って間違いのない練習をして上達することが大事。芸大から桐朋の院に行った若手の高木凛々子さんのお手本動画がアップされているから参考に。

2022年4月30日追記  澤さんのこれもお手本動画

https://youtu.be/ofrI9Wjcrew


三番目に心理的な上達について。

まず毎日の練習を飽くことなく継続する心理。これは粘り強く習慣化するまで少し大変かもしれない。しかし成果を感じだすと楽しいので、練習が当たり前になればしめたもの。やらなければ逆に不安になるほどである。

次にレッスンに通う習慣と発表会に出る意気込み。これも習慣なのだが、この習慣を何年間つけられるかが、勝負の分かれ目になる。ある程度上達すれば、発表会だけでは足りなくなって、率先してたくさんの演奏機会を求めるようになり、相乗効果で上達する。逆に言えば途上でつまづくとそれでジエンドになるということだ。

面白いことだが、井の中の蛙大海を知らずを意図的に使う上達方法と、最初から大海に放り投げて上達させる方法があり、なにもわからない子供に競争させて上達させるうえでは褒めて育てる方法は効果的だが、ある程度のレベルまでしか通用しない。最初から世界クラスの環境でやらせることは負荷が大きいものの、厳しい基準をクリアした者だけを競争させるので、シビアに選別が行われると同時に残る者は一定のレベルになる。

では後者のほうが、心理的負荷は大きいが優れているのかと言えば、これがそうとは限らない。井の中の蛙大海を知らずのようで、のびのびと音楽を楽しんで演奏する習慣がつくと、実は厳しい基準を後回しにしても世界で通用する人が出てくるのである。

細かい規律ばかりを突っつきまわしてがんじがらめにして育てるやり方は、とても音楽を楽しむなどという心理ではないから、基礎練習と楽曲の演奏で気持ちを180度切替える訓練を意識的にする教師につくのがベストだと思う。なかなかそのあたりのメリハリがきいた、気の利いた先生は出会うことは難しいし、その気持ちの切り替えの習得は生徒の側がしなければならない実践技術なのである。

あとは演奏の場による心構えの違いを習得することだが、私はプロではないので、あまり参考になることは言えない。発表会は一楽章や小品だけ弾けばよいので、そこまでの技量はいらないと思う。問題は聴き手が暇つぶしなのか耳をそばだてているのかみたいな温度差を感じる空気の問題かもしれない。完璧な準備をして演奏するのだから、どんな聴き手でも同じかと言えば、まったくそんなことはない。どこまでも音楽は音楽であって、聴き手の猜疑心や不信感や軽蔑などのネガティブな感覚は伸びやかな演奏を阻害するものだから、どれだけ会場の雰囲気が重要かというところである。司会の雰囲気づくりに助けられたという経験がある方も多いのではないか。

まったく人や環境に左右されずに演奏できる技量などというものは、本来ありえない。

プロならどんな場でも弾けなければならないという通説は一面は確かにそうであるが、実際上雰囲気がよいほうがよいに決まっている。

どこまでも人間がやるものである以上、いかに真摯に音楽と向き合えるかというベースがあってこその演奏と楽しみなのだと思う。会場の全員にある尊厳を尊重する空気がクラシック音楽の前提条件なのだが、そこのところの基礎がない会場は音楽をもって感化するやりがいがあると同時に音楽することはとてもたいへんだ。