一年を通じて台湾海峡を軍艦でまともに渡れるのは4月と10月だけらしい。
つまり今年はもう中国軍による台湾への軍事攻撃はないだろうと考えてよい。
習近平という人は「祖国の神聖な領土」であると断言して譲るつもりはないらしいが、実際に痛撃を与えられるか、軍事攻撃ができるか、と言えばこれは非常に疑わしいのである。客観的に見ると、台湾と同盟国が無条件降伏するのを待つ構えである。
近年の中国高官がずいぶんと大胆で強気な発言を繰り返すのを見るにつけ、これは大国になったからではなく、もともとの国を一番だと信ずる世界観、つまり国家主義によっているのだなとわかる。祖国の定義がまったく定まっておらず、大した根拠もなく台湾を領土であると主張し、あげく尖閣諸島まで中国固有の領土であると言い出す。
きちんと調べるまでもなく、台湾島がずっと中国の領土であったという記録は存在していない。歴史的に中国の王朝の支配力が弱まって単立した政治地域になった時期が多く存在しているし、旧日本の領土にもなっていた。
なにか中国が今なら領土拡張は赦されると考えているとしたら、時代錯誤であると言わざるを得ない。あちこちで領有権を主張しているがどれひとつ認められていないのは当然である。今はそういう軍事力で領土を拡張する時代ではない。
実際の軍事バランスもあって台湾が無条件降伏する兆しはほぼゼロである。中国側も手も足も出せないといった印象だ。むしろアメリカが武器を台湾に売るのでピリピリするというのは軍事的領土拡張のスキを狙っていることの証明でもある。
そもそも中国は外圧をかける前に、国内の自治問題を解決しなければならない。チベットやウイグルの問題が片付いていない。時代遅れな単一民族国家教育を断行し、中華思想という世界征服の国家主義を教育するという、およそ思いあがった無謀な方針を打ち出している。つまり、世界のいずれの民族も地域もその自治を認めないとする中国共産党の思惑が最初から見えている。それを中華思想とも一国主義ともいう。
欧米との対決という構図でもなく、世界を征服してすべてを共産党にしようという滅茶苦茶な国策がまずあって、その拡大としての台湾に対する軍事的威嚇行為がなされているのだから、台湾人こそたまったものではない。もし習近平が台湾の支配者になるのであれば、まったく慈悲のカケラもないことがわかっているのだから反対するほうが強いに決まっている。中共のやり方はひたすら軍事的圧力をかけて心理的に圧迫し、無血開城を狙っているのだ。香港のように自由や自治権はいとも簡単に政治的にはく奪できると踏んでいるのかもしれない。まっとうな多数決では中共側の政権は誕生しづらいから、脅迫、恫喝をもって台湾人が中共でも仕方ないと諦めさせる手なのだ。
台湾の現在の繁栄の基礎は日本統治時代にはできあがっていた。中国政府によってではなく、オランダや日本によって台湾の様々な文化や伝統の基礎ができてこそ、現在の繁栄がある。世界ランクの上位にあれほど小さな島国が入っているのは、シンガポールと並んで驚異的なことだろう。
万が一、台湾人の懐古感や自由意志によって中共側政権が誕生してしまったら、自由と自治を行う人たちが北京から狙い撃ちにされてその資産のほとんどは中共が接収する運びとならざるをえない。自由と自治という資産を手放して資産にいったいなんの価値があるのかという疑問があるが、まさに決めるのは台湾人たちが主でなければならないと思う。
領土問題として習近平は取扱いたいらしいが、世界は自由経済と自治と人権問題として見ていることがまったくわからないようだ。犬の見方と人の見方の違いである。国が介入できるのは限定的なインフラや規格上の問題などがメインであって、国民や周辺を危険にさらして不安を増大させることであってはならない。
それにしても台湾は大陸に近すぎるので、心理的な負担はかなりのものだろう。
習近平が台湾を脅かす地上げのマフィアにしか見えないのは私だけであろうか?
中国共産党はなにも聴く耳を持たない。自由主義陣営も決して共産党の挑発を真に受けてはならない。ただの陣取り合戦ではないからである。我々の生活と人類の未来がかかっている。
コロナと香港問題で対中政策は世界中で見直しが始まり、台湾との距離の取り方にも変化の兆しが見える。経済交流は絶やしてはいけないが、狂犬の動きと中国軍の侵略にはきちんと備えておかねばならない。次は来年の4月に照準を絞って監視しておくことが絶対に欠かせない。