FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

バイオリン本体にいくらかけたら気が済むか?初心者向けから名器まで弾いてみて

 どれも同じにしか見えないバイオリンたち。

 5万円のバイオリンから10億を下らないような楽器まで、ほぼまんべんなく試しに音を出してみたり簡単な曲を弾いてみたりした感想です。

 いくつかの楽器店の展示会や弦楽器フェアに行ってみました。

 10年がかりでいくつもの会場を回ってみて、いくつとなく楽器を触ってみて、業界の暴露話みたいになってしまうかもしれませんが、特に困る人が出そうな内容でもないので、趣味でやる方もプロ目指す方もしっかり練習したほうがいいという話でもあり、遠慮しないで記事にしました。

 よくある間違いなのですが、古ければいい楽器だという誤解があります。これは一応代々弾いた人がいる場合は、なんとか弾けるという証明があるわけなのですが、しかしその人たちが幸福だったかどうかは別です。つまりその古い楽器にまつわる恐ろしい逸話が隠されている場合もあるわけです。楽器自体のランクが低い場合はあまり幸福な逸話がつかないことは容易に想像がつきます。

 楽器自体のランクというのは材料のランクと製作した時の精度の高さが主なものです。それに板厚や板の強度バランスというのが音量や音質に影響してきます。これは製作時に決まっている楽器のDNAみたいなものなので後から改良することはとても手間がかかって難しく、しかも製作者に無断でもし削りでもしたらそれこそ問題になります。しきたりとしてもそういう改良はやらないようです。浅はかにもストラディバリを改良しようとして楽器がお釈迦になった逸話もあります。

 楽器商や楽器職人は楽器そのものを目で見て品評します。彫刻のレベルや板の厚みや強度バランスを見て良い悪いを見定めます。面白いことに音を出さないでかなりの部分がわかるようです。

 しかし私は残念ながらそのような技術は持っていませんので、音を出してみて、その楽器がどのくらいのものかを見定めようとするしかありません。

 この地球上のバイオリンで最高峰とされるストラディバリの最盛期のものや失敗作などを基準にして、どのくらいの音のゴージャスさ、音量、精度の高さ、それらからくる演奏のしやすさを自分の経験上の数値化として価格と見合わせてみるという体験を重ねてみました。

 そして実におおまかでわかりやすい区分をつけることができるようになりました。誰でもわかりそうな区分ですが、案外みなさんよくわからないので参考程度に。

 大量生産楽器は20万円前後までの価格で初心者しか興味がないので割愛します。部品がとにかく機械で削った量産品だから安価なのですが、とても薄っぺらな音がしてゴージャスさより安い音という印象がします。これに高級弦を張っても、やはり安い音になってしまうので、どうにもならないです。ですが、練習用には最適で少々落としたり削れたりしてもあまり気にしなくてよいのが利点です。

 難しいのは30万円や40万円くらいからです。この境界に幅があるので、見定めは慎重にしなければなりません。手工品とされる職人の手が入ったものがラインナップされますが、手が入っているのは一部です。そしてやはり安い音がします。一部手を入れていますし材料も少しよいものを使っているので、わずかにアドバンテージはあります。しかし中途半端に手をかけているものの、出てくる音という点であまり意味がないと言わざるを得ません。たとえ何らかの有名ブランドでも同じことです。

 少なくとも工房で職人さんが一応ほぼ削って作っているものが、メインの話です。

 きちんとしたコンクールに入選するような作品は基準があって、音質や音量などのバランスに秀でているから入賞しています。そういうものは200万円以上が当たり前になります。実際になるほどという音がします。予算があれば家宝になるようなものですからぜひ秀作をお買い求めになるとよいと思います。たとえ自分の子供が弾かなくても孫が弾くかその孫が弾くかもしれませんから。

 面白いのは職人さんが製作していて、コンクールというハクがついていないものの品定めです。ここは50万円から220万円くらいの広い幅があります。

 極論すればこの価格帯の楽器はどれも同じです。よほど鳴りがいい楽器やいい音がするなというものは、それなりの製作家が作ったものとして発掘されるか、いいラベルを貼られて販売され、つまり220万円を超える値付けに回されます。新作でまだ高価格に回されていない良品を探すのが良いですね。

 そうでないものは大差ないというのが実感です。これに異論があることは想定しています。全部個体差があるのだから、当然音量も違うし音質も違うはずだと。

 安っぽくはない音の内に入るものの、ゴージャスでゴンゴンビンビン鳴り渡るという楽器が著しく少ない価格帯です。その違いをもし問題にするならば、音が明るく感じられるか、しっとり暗い感じか、という大まかな方向性です。

 はっきり言って、大ホールで弾くわけでもない、せいぜい部屋や小ホールで弾く程度なら同じようなものです。これは楽器商は高い値付けをしたものが売れなくなるから面白くない話かもしれませんが、40万円も150万円もほぼ同じ程度の表現力です。むしろラベルや仕入れ先が確かな本物かどうかとか、整備状況がきちんとしているかどうか、の方で値段がついているので、それを別にした音の違いで見ると、つまり楽器としての能力はほぼ同等です。もちろん個体差があるので、違いはありますよ。

 大切なのはしっかり鳴らすことができる右腕、腕前の方で、まず初心者楽器をガンガン鳴らし歌わせることができるかどうかです。それができるようになったら、コンクールレベルの家宝になるものか、ガラクタにするか、モダンやオールドにするかというのを決めてから選べばよいかと思います。40万円から220万円がガラクタなんて信じられますか?ガラクタの値段か?いやまさにガラクタによく投資するなあと呆れるやら感心するやら、アホかとも思います。古くなっても値段は上がりません。

 海外ではファインバイオリンというカテゴリがあります。病気のバイオリンとは直接的には言いませんが、要するに病気のバイオリンがたくさん残っています。ガラクタとも言いますが病気ともいいます。最初に書いたとおり、材料や精度がきちんとしていないものは、たとえ職人が作っていてもあまり鳴らずに音の質もあまりよくないです。精度が低いというのはバイオリンとしては実は致命的なものです。演奏者がボケるか神経質になりやすいからです。むしろそれなら入門用バイオリンで2万円とかの方が健康な場合もあります。

 で、そういう病的なバイオリンが大量に流通販売されているのが事実ですし、そういう楽器をつかまされて弾いている人が病的になりやすいというのも事実です。健康なバイオリンはとにかく高いわけです。大まかにですが240万円くらい以上します。

 健康なだけに音は明るく鳴り渡りとても演奏しやすいものです。

 そこで今日のお題ですが、ちょうど250万円(税抜)くらいかけたら気が済むということになりました。例外的に100万円~150万円でいいバイオリンがあるのを知りましたが、どこのどのバイオリンかは秘密にしておきます。将来1000万円クラスに化けますからね。七十万くらいの新作で面白い楽器も見付けましたが、これも300万円くらいになりそうな良品です。

 私が今使っている楽器は国内の通常の値付けで130万円以上の実力はありますが、ラベルがあきらかに偽ラベルでしかないものなので、初心者用楽器に少し足すくらいの値段で購入することができました。値が上がらない精神衛生に気を付けなければならないシロモノなので、それくらいしかお小遣いを投入できませんでした。

 こういう発掘を繰り返していって一財をなすような人っていないですかね。昔とは違って今はもうそんな冒険する人はいないでしょうね。危険のほうが大きい冒険にすぎませんから。