FujiYama’s blog

バイオリン弾きの日常的な生活の風景、感想などのブログです 政経もけっこうあります

趣味のバイオリンでドミナント一択はつまらないか?

 

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まさに王道

 よく考えてもよくわからない弦の違い。

 試してみてこんな印象かという経験を繰り返してみて、ようやく自分好みの音に辿り着くという楽しみは果たして捨ててもよいのか?

 本当に自分の楽器にあっているのか?

 価格に見合っているのだろうか?

 腕に見合っているのかな?

 いろいろ試したり考えたりするものですから、それを止めるつもりはございません。

 気分を変えたいという理由で弦の種類を変えられるのが趣味のよいところでもあります。でもプロ品質の音色を極めようとすれば、実は同じ弦で弾き込んだほうが音色や音質の違いを聞き取りやすくなるのではないかと思います。なので、あまりコロコロ変えすぎるのは、腕の上達に悪影響があるかもしれません。もちろんボーイング(運弓)の安定した自信のある経験豊かな方なら大丈夫だと思います。

 なぜ経験豊かな人たちや専門家、ソリストの一部に熱烈にドミナントが支持されるのか、という疑問をお持ちの方がおられるようです。

 しかしズバリ品質と価格のバランスが完璧なのです。これだけ大量に販売されている弦ですから、不良品率が低いに決まっています。まだ不良品にはお会いしていません。ガット弦では気候の変化に弱いだけでなく在庫管理がシビアすぎて実際に何本もすぐに切れました。数日や2週間で切れていては、これは買いづらい商品だと思います。

 品質の安定感が量産によるもので、なおかつナイロンの安定性があるということです。

 音色、音質に関して、少しひ弱な感じの初心者用楽器でも、低音が鳴る中級楽器でも、ソリストが使うような楽器でも、まんべんなくよく鳴るほうだと思います。全般的に良いものにも弱点があるはずなのですが、初心者用でも中級でもその弱点が感じられません。繊細なソリストはハーン教授が見事なお手本を示しています。

 耐久性ですが、高額な弦なら耐久性があるのかと言えば、実は大差ないのです。きらびやかで華やかなガシガシ言うような期間は2週間から1か月程度の範囲内です。余裕がある方は、すぐに交換すればそれで済みますが、普通の趣味ではなかなかそこまで頻繁に交換とはいきません。そこで、きらびやかさが去ったあとの音質の勝負、その違いも込みで比較をして、それでもなお好きかどうか、使えるかどうか、という点に照準を絞ります。いわゆる十分主張できる音質、音色だなというのがドミナントです。実は他の弦で3週間程度したあとの、なんともいえないわびしさとか寂しさというのがあまり好まれないのではないかと思います。全ての弦を試したわけではありませんが、比較的そのギャップが小さいと感じられる弦かなと思います。

 しかし不安定性ときらびやかさを別にすればガット弦は音色が半年くらいもちます。これは驚異的な耐久性で趣味なら選択肢に入る方もおられます。楽章ごと1曲ごとに調弦するのが楽しみな方はどうぞ。

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 ある程度までは交換して楽しむ期間や機会をもつことは、その趣味の範囲内のことだと思います。しかしそのことで練習がおろそかになったり、練習した気になってすっぽかしたりするならば、あまり弦に気を取られ過ぎはよくないぞとバイオリンの精たちに言われるでしょう。

 音作りのもう一つの要素である弓の品質、操作性というものがあれば、ドミナントで十分に音楽は表現できるということだと思います。弦にあれこれこだわる時間があったらドミナントに弦を定めて、発音・アクセント・トーンに至るまで音楽性の基本を左右する弓にこだわってみるというのも大事です。

 そして世界中で大ヒットしてロングセラーで在り続けている理由が必ず存在しています。その各商品の中で、なおプロアマ問わず使いやすいという実感に満ちた最大の支持を得ているのがドミナントです。ストレート弦セットだと現在まで3850円で販売されています。

 弦の消耗を気にしながら演奏して楽しい人は誰もいないのではないでしょうか?そんな小さな金額を気にしながら演奏したくないというバイオリン弾きの願いは、実はプロもアマも同じようです。まったく気にならない人も当然いますから、そういう人は高額な商品でなおかつ音色がよいものを選べばよいのですが、そのためには毎月の収入がそれに見合うだけなければなりません。プロでも毎月安定してそれだけ収入を得るとなると、弓の毛の種類も高品質なものを使用していますから、人気講師とか人気ソリストとか、有名オーケストラなどの楽員くらいでしょうか?プロオケでも教員より給料が安いようなシンドいプロもあり、ふつうの音大卒くらいでは、結構資産家じゃないと難しい弦があります。なにしろ、きらびやかな時期はどれも同じ程度だからです。

 別に演奏して収入をえようとまではいかない趣味のバイオリンならドミナント一択は実はかしこい選択なようです。変に高額な弦を使えば顰蹙を買うことも多々あるでしょう。本人はそれで満足なのですが、なんとなく、ね。よほど腕のいい人じゃないとっていうところは、そのあたりでしょうか。自信過剰とか自己満とか揶揄されそうなところです。自由なのは間違いないのですが、演奏内容が引きあうかどうかですね。

 私がもしバイオリンで生計がたつ収入を得られるならナイロン志向のパッシオーネを使いたいです。ですが、そういう予算を抜きにした夢物語には、あまり意味がないような気がします。

 あと、注意しなければならないのは気取ったバイオリン弾きたちからは馬鹿にされるだろうということです。お高いのよ、とか言う感じで。。。音楽ははたして富裕層だけのものか、というテーマでまた記事を書きたくなるかと思いますが・・・。

 ある楽器屋さんの売れ筋ランキングの推移をみてなるほどなと思いました。まず消費税が8%になった時に大きな変化がありました。それまでは高級弦(オリーブ、エヴァピラッツィ、オブリガート)と中級オイドクサが各1割余りとドミナントが2割くらいの金額ベースで上位6割を占めていましたが、増税したら急にドミナントの割合が増え、そこからじわじわとドミナント一色の状態に近づいています。2017年にはとうとうドミナントだけで49・5%を占めるまでになりました。2位がある程度安いガットのオイドクサで12%ほどと水をおおきくあけられています。2019年消費税が10%になってしかもコロナなどで景気がそれほどよくなくなってしまったので、この傾向はさらに進むのではないかと思います。品質と価格のバランスから販売量が増える一方なのですね。もはや高級弦はまともな生産量を確保できず、さらなる値上げも難しいという窮地に立たされていることになります。あまり嬉しくないことですが、日本国全体の貧困化がいかに幅広く進んでいるのかがよくわかる数字がありました。

 時代の要請としてドミナント一択というのもあるようです。